DeepInfer と LMDeploy:DeepSeek V4.1-Flash のサービングを比べる
LMDeploy は中国系エコシステムで最も近い比較対象だ。DeepSeek V3/R1 の最適化、PD 分離、OpenAI 互換 API、Ascend 経路を持つサービングツールキットである。DeepInfer はより狭く、V4.1 専用だ。
DeepInfer と LMDeploy はどちらも DeepSeek モデル向けに最適化されているが、同じ製品ではない。DeepInfer は DeepSeek が Apache-2.0 で公開した、DeepSeek-V4.1-Flash 専用のエンジンで、配布物はオフラインのみ、対応は NVIDIA SM100 と Huawei Ascend 950 だ。LMDeploy は InternLM のオープンソースツールキットで、LLM の圧縮、デプロイ、サービングを担う。独自の TurboMind エンジンと PyTorch エンジン、完全な OpenAI 互換 API サーバーを持ち、DeepSeek V3/R1 の取り組みも文書化している。V4.1-Flash について公開された直接比較はない。
結論から
LMDeploy を選ぶのは、今すぐ提供できる API が必要な場合、DeepSeek の既存のデプロイ経路を使いたい場合、成熟したサービング層を備えた Ascend 対応スタックが要る場合だ。DeepInfer を検討するのは、DeepSeek 自身の V4.1-Flash エンジン、とくに DSpark/SWA/EPLB の実装が欲しく、サービング層は自分で作る用意がある場合である。
重要な但し書きがある。LMDeploy の README が文書化しているのは DeepSeek V3/R1 であり、V4.1-Flash ではない。古い DeepSeek モデルに対応しているからといって、新しいモデルも対応していると決めつけないこと。採用前に現行の対応表と、TurboMind か PyTorch かというエンジンの別を確認する。
それぞれの概要
DeepInfer
DeepInfer は、DeepSeek-V4.1-Flash を大規模にサービングするための DeepSeek のオープンソース推論フレームワークだ。ライセンスは Apache-2.0 で、NVIDIA SM100 と Huawei Ascend 950 に対応する。最適化カーネル、Wide-EP/EPLB、DSpark、SWA 有界リプレイ、非同期スケジューリング、決定論モード、構造化出力を備えたオフラインエンジンとして公開されている。
公開版には KV cache システム、prefill/decode 分離、データ並列の負荷分散が含まれない。対応モデルは1つだけだ。価値は DeepSeek 固有のチューニングと、本番の推論スタックを覗ける点にある。
LMDeploy
LMDeploy は、LLM の圧縮、デプロイ、サービングを行うオープンソースツールキットだ。エンジンは2つある。高性能な CUDA エンジンの TurboMind と、より広いハードウェアに対応する PyTorch エンジンである。文書化されている機能には、永続バッチ(連続バッチ処理)、ブロック単位の KV cache、テンソル並列、高性能な CUDA カーネル、KV cache の量子化、AWQ、自動プレフィックスキャッシュがある。
DeepSeek については、V3/R1 への対応、FlashMLA、DeepGemm、DeepEP、MicroBatch、EPLB といった DeepSeek 向け最適化、DLSlime と Mooncake を介した PD 分離が文書化されている。さらに /v1/chat/completions、/v1/models、/v1/completions を備えた OpenAI 互換 API サーバーも同梱する。PyTorch エンジンは Huawei Ascend 対応を文書化している。
比較表:速度ではなく適用範囲
| 項目 | DeepInfer | LMDeploy |
|---|---|---|
| 種類 | DeepSeek 専用のオフラインエンジン | 汎用 LLM サービングツールキット(TurboMind + PyTorch エンジン) |
| V4.1-Flash 対応 | 公式リリース。対応モデルはこれのみ | 本記事では未確認。V3/R1 は文書化済み — 対応表を確認 |
| オンライン API | 公開版にはなし | OpenAI 互換 API サーバー |
| KV cache | 含まれない | ブロック単位の KV cache、プレフィックスキャッシュ、KV cache の量子化 |
| PD 分離 | 含まれない | DeepSeek 向けに DLSlime と Mooncake 経由で文書化 |
| DeepSeek 向けチューニング | DSpark、SWA リプレイ、Wide-EP/EPLB | FlashMLA、DeepGemm、DeepEP、MicroBatch、EPLB |
| ハードウェア | SM100、Ascend 950 | NVIDIA CUDA。Ascend は PyTorch エンジン経由 |
| ライセンス | Apache-2.0 | Apache-2.0 |
| 向いている用途 | V4.1 の研究と独自デプロイ | DeepSeek V3/R1 のサービング、Ascend、API 優先のスタック |
出典:DeepInfer の README と Q&A、LMDeploy の README と OpenAI 互換 API のドキュメント。2026-10-20 参照。
DeepInfer が優位な点
- V4.1-Flash が設計の出発点。エンジンは V4.1 の CED アーキテクチャ、DSpark のドラフト経路、SWA 有界リプレイ、Wide-EP のデコード配置を前提に作られている。LMDeploy の公開された DeepSeek 向けの取り組みは、いまも V3/R1 を中心に説明されている。
- DeepSeek 自身の本番ノート。Q&A には、参照構成で演算をなぜ 64+64 に分けるのか、EPLB がホットなエキスパートにどう反応するのか、KV cache の設計がどうなっているのかが書かれている。汎用ツールキットの機能一覧とは種類の違う証拠だ。
- 決定論モード。バッチ不変推論と決定論的サンプリング(NVIDIA のみ)が表に出ている。再現性のある評価や監査が必要なら、これは効く。
- Ascend 950 が公式リリースに含まれる。LMDeploy にも Ascend 経路はあるが、DeepInfer は Ascend 950 を SM100 と並ぶ第一級の対象として挙げている。
LMDeploy が優位な点
- 本物のサービング層。OpenAI 互換のエンドポイント、リクエスト処理、文書化された API サーバーがある。DeepInfer はオフライン推論で止まる。
- PD 分離がすでに統合済み。LMDeploy は DLSlime と Mooncake を介した DeepSeek の PD デプロイを文書化している。DeepInfer は PD を運用者に任せる。
- 量子化とキャッシュの制御。KV cache の量子化、AWQ、プレフィックスキャッシュがツールキットに含まれる。DeepInfer の公開版にはサービスレベルの KV cache がない。
- DeepSeek V3/R1 の実績。現在これらのモデルをサービングしているなら、LMDeploy には文書化された経路がある。V4.1 が未解決の問いであって、基準線ではない。
- ハードウェアの広さ。NVIDIA CUDA に加え、PyTorch エンジン経由の Ascend 経路がある。TurboMind は CUDA に軸を置いたエンジンだ。
ベンチマークの罠
LMDeploy の README は、連続バッチ処理、ブロック単位の KV cache、動的な split-and-fuse、テンソル並列、CUDA カーネルを用いて「vLLM 比で最大 1.8 倍のリクエストスループット」と主張している。これは LMDeploy 自身の試験における vLLM との比較であり、DeepInfer との比較ではない。
DeepInfer のグラフは prefill に 4 基、decode に 64 基の SM100 GPU を使い、コンテキストは 131,072 トークン、デコード設定は nextn=3 とドラフト受入率 75% だ。この2つの数値は、モデル、ハードウェア、コンテキスト、バッチ方針、キャッシュヒット率、SLO を揃えない限り、同じ順位表には置けない。
こちらは同一のハードウェアでどちらのエンジンも動かしていない。判断が必要なら、チェックポイント、GPU/NPU の種類と枚数、量子化、入出力長の分布、同時実行数を固定し、p50/p95/p99 の TTFT と TPOT、レイテンシ制約下のスループット、送出した出力100万トークンあたりのコストを測る。
第三者が、V4.1-Flash 上で DeepInfer と LMDeploy を同じハードウェアで比べ、正確なバージョン、エンジンの選択、PD 構成、キャッシュ設定を添えて示す比較。それが出るまでは、「速い」は仮説であって知見ではない。
選び方
| こういう場合 | まず選ぶなら | 理由 |
|---|---|---|
| 今すぐ API が必要 | LMDeploy | OpenAI 互換サーバーと完全なサービング層 |
| DeepSeek V3/R1 を動かしている | LMDeploy | 文書化されたモデル対応と DeepSeek 向け最適化 |
| PD 分離が必要 | LMDeploy | DLSlime/Mooncake との統合が文書化されている |
| SM100 か Ascend 950 があり、V4.1-Flash だけを動かす | 両方を評価 | DeepInfer は V4.1 専用。LMDeploy の V4.1 対応は確認が必要 |
| DeepSeek の V4.1 エンジンを研究したい | DeepInfer | DSpark、SWA リプレイ、EPLB、本番の Q&A |
FAQ
DeepInfer は LMDeploy より速いのか
公開された直接比較はない。LMDeploy のスループット 1.8 倍という主張は自社試験での vLLM との比較であり、DeepInfer との比較ではない。DeepInfer のグラフは SM100 上での自社測定だ。どちらもワークロード固有の数値として扱うこと。
LMDeploy は DeepSeek-V4.1-Flash に対応しているのか
本記事では確認していない。LMDeploy は DeepSeek V3/R1 への対応、DeepSeek 向け最適化、PD 分離を文書化している。V4.1-Flash と決めつける前に、現行の対応表を確認してほしい。
LMDeploy は Huawei Ascend に対応しているのか
対応している。LMDeploy の PyTorch エンジンは Huawei Ascend 対応を文書化している。TurboMind エンジンは NVIDIA 向けだ。モデルとエンジンの対応表を確認すること。
どちらを選ぶべきか
提供できる API、DeepSeek V3/R1、Ascend 対応スタックが必要なら LMDeploy。V4.1-Flash 固有の研究や、SM100・Ascend 950 上での独自デプロイなら DeepInfer を検討する。
出典
- LMDeploy README — エンジン、DeepSeek 向けの取り組み、PD 統合、Ascend、量子化、ライセンス。
- LMDeploy OpenAI 互換 API のドキュメント — エンドポイントと起動コマンド。
- DeepInfer README — 適用範囲、ハードウェア、欠けている構成要素、グラフ。
- DeepInfer の制限 — 欠けているサービング層。
- 10本の比較 — vLLM、SGLang、TensorRT-LLM、TGI、Xinference、Dynamo、llama.cpp、Ollama、MLC-LLM。
次に読む:DeepInfer と TGI、Xinference との比較、あるいは比較一覧。