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DeepInfer と SGLang:V4.1-Flash のサービングを比べる

SGLang が最も近い比較対象なのは、DeepSeek-V4.1-Flash の手順がすでにあるからだ。DSpark、PD 分離、HiCache、ルーターまで含む。DeepInfer には DeepSeek 自身のエンジンがあるが、サービング層はない。選択の焦点は速度よりも、スタックをどこまで自分で持つかにある。

公開資料ベースの比較/読了目安 11 分/2026-10-20 確認

DeepInfer と SGLang はどちらも DeepSeek-V4.1-Flash を狙うが、層が違う。DeepInfer は DeepSeek が Apache-2.0 で公開した1モデル専用の推論エンジンで、配布物はオフラインのみだ。SGLang は汎用の高性能サービングフレームワークで、V4.1-Flash のプレビュー手順、OpenAI 互換 API、PD 分離、HiCache、ルーターを備える。公開された直接比較はない。ここで比べるのは適用範囲と適合である。

結論から

今日いちばん完全な V4.1-Flash のサービング経路が欲しいなら、SGLang から始める。ただしプレビューという但し書きをよく読むこと。V4.1 対応はプレビューの Docker イメージを使い、2026-10-20 時点で正規の SGLang リリースには入っていない。DeepSeek 自身のエンジンが欲しく、SM100 か Ascend 950 のハードウェアがあり、サービング層を作る覚悟があるなら、DeepInfer を評価する。

「DeepInfer が速い」「SGLang が速い」というページではない。同じモデル、同じハードウェア、同じワークロードでの公開ベンチマークは存在しない。SGLang の見出しの数字と DeepInfer のグラフは、そもそも別の計測器だ。

それぞれの概要

DeepInfer

DeepInfer は、DeepSeek-V4.1-Flash を大規模にサービングするための DeepSeek のオープンソース推論フレームワークだ。ライセンスは Apache-2.0 で、NVIDIA SM100 と Huawei Ascend 950 に対応する。最適化カーネル、Wide-EP/EPLB、DSpark、SWA 有界リプレイ、非同期スケジューリング、決定論モード、構造化出力を備えたオフラインエンジンとして公開されている。

公開版には KV cache システム、prefill/decode 分離、データ並列の負荷分散が含まれない。対応モデルは1つだけだ。価値は DeepSeek 固有のチューニングと、本番の推論スタックを覗ける点にあり、すぐ使える API ではない。

SGLang

SGLang は汎用の高性能サービングフレームワークだ。V4.1-Flash の cookbook には、プレビューイメージ、DSpark による投機的デコーディング、PD 分離、HiCache(階層型 KV キャッシュ)、SWA 有界リプレイ、Engram、OpenAI 互換 API、キャッシュを意識したルーターが記載されている。day-0 の記事では、検証済みのハードウェア経路として NVIDIA Blackwell/Hopper と AMD MI350X が挙げられている。

重要な但し書きがある。SGLang は V4.1-Flash 対応について「まだ SGLang のリリースには入っていない」としており、pip install sglang の正規版ではサービングできない。cookbook はプレビューの Docker イメージを使う。これは脚注ではなく、実際の運用リスクだ。

比較表:速度ではなく適用範囲

項目DeepInferSGLang
種類DeepSeek 専用のオフラインエンジン汎用の高性能サービングフレームワーク
V4.1-Flash 対応公式リリース。対応モデルはこれのみday-0 のプレビュー手順。正規リリースには未収録
オンライン API公開版にはなしOpenAI 互換サーバー
KV cache含まれないRadixAttention のプレフィックスキャッシュ、HiCache の階層
PD 分離含まれないV4.1 の手順で文書化・検証済み
投機的デコーディングDSparkV4.1 では DSpark。一般にはより広い投機的実行に対応
ルーター含まれないキャッシュを意識したポリシーを持つ sglang_router
ハードウェアSM100、Ascend 950NVIDIA Blackwell/Hopper。V4.1 プレビューでは AMD MI350X
ライセンスApache-2.0Apache-2.0
成熟度初期の公開リリース成熟した汎用プロジェクト。V4.1 の経路はプレビュー
向いている用途DeepSeek 固有の研究と独自デプロイ今すぐより完全な V4.1 サービング経路が欲しいチーム

出典:DeepInfer の README と Q&A、SGLang の V4.1 cookbook と day-0 記事。2026-10-20 参照。

DeepInfer が優位な点

  • DeepSeek 自身のチューニング。エンジンは V4.1 の CED アーキテクチャ、DSpark、SWA 有界リプレイ、Wide-EP のデコードを前提に作られている。公開されているもののうち、DeepSeek の本番計算経路に最も近い。
  • Ascend 950 が公式リリースに含まれる。SGLang は AMD と NVIDIA の経路を持つ。DeepInfer は SM100 と並べて Huawei Ascend 950 を挙げている。Ascend が自分の基盤なら、これは効く。
  • 決定論モード。バッチ不変推論と決定論的サンプリング(NVIDIA のみ)が使える。SGLang の V4.1 cookbook は、現状のバックエンドが決定論的推論を拒否し、バッチ構成に対してビット単位で安定しないとしている。
  • 適用範囲の単純さ。1モデル、1エンジン、汎用フレームワークの互換層はない。研究目的の配備なら、このほうが筋を追いやすい。

SGLang が優位な点

  • 完結したサービング層。OpenAI 互換 API、PD 分離、HiCache、プレフィックスキャッシュ、ルーターが V4.1 手順の文書化された構成要素になっている。DeepInfer はこれらを統合作業として残す。
  • ハードウェアの選択肢が多い。V4.1 cookbook は NVIDIA B200/B300/GB300/H200 と AMD MI350X を扱う。DeepInfer の公式リストは SM100 と Ascend 950 だ。
  • 運用の道具。cookbook には低レイテンシ向けと高スループット向けの起動コマンド一式があり、長いコンテキストを扱うエージェント向けの設定もある。ゼロから動くサービスまでの距離が短い。
  • 成熟した汎用フレームワーク。公開初日のエンジンと比べて、コミュニティが広く、統合が多く、本番運用の歴史も長い。

ベンチマークの罠

SGLang の day-0 記事は、4× GB300 上でバッチサイズ 1 のとき 873.63 tokens/s(DSpark 使用、シミュレーション上の受入長 5.5)と報告している。これは特定の構成における単一ストリームのデコード結果だ。サービングのスループットではなく、DeepInfer との比較でもない。

DeepInfer のデコードのグラフは 64 基の SM100 GPU、131,072 トークンのコンテキスト、nextn=3、ドラフト受入率 75% の仮定を使う。軸は出力スループットとユーザーあたりの速度だ。SGLang の数値と DeepInfer のグラフは、モデル、ハードウェア、コンテキスト、受入率、同時実行数を揃えない限り、同じ順位表には並べられない。

有用なのは統制された比較だ。同じチェックポイント、同じ GPU 枚数、同じ入出力長の分布、同じキャッシュヒット率、同じ SLO。そのうえで p50/p95/p99 の TTFT と TPOT、レイテンシ制約下のスループット、送出した出力100万トークンあたりのコストを報告する。どちらのベンダーも、相手のエンジンについてそれを公開していない。こちらも同一のハードウェアでどちらも動かしていない。これは公開資料ベースの比較である。

判断が変わる条件

第三者が、V4.1-Flash 上で DeepInfer と SGLang を同じハードウェアで比べ、正確なコミット、プレビューイメージのタグ、受入率、キャッシュ設定を添えて示すベンチマーク。それが出るまでは、「速い」は分母のない主張でしかない。

プレビューという但し書き

「SGLang は V4.1-Flash に対応している」は正しいが、不十分だ。cookbook は対応が SGLang のリリースに入っていないと明言し、プレビューの Docker イメージを使っている。つまり:

  • 固定された安定版ではなく、動き続けるイメージを追うことになる。
  • フラグとバックエンドの挙動は、プレビュービルドの間で変わりうる。
  • イメージのダイジェストを固定し、アップグレードは本番依存の更新として試験すべきだ。

DeepInfer の但し書きは逆だ。安定したコードの公開ではあるが、プロジェクトとしてはごく初期で、公開時のコミットは3件、リリースタグもない。どちらも違う形で早い段階にある。「プレビュー」を「使えない」と読み違えず、「公式リリース」を「成熟」と読み違えないこと。

選び方

こういう場合まず選ぶなら理由
V4.1 の API を今すぐ提供したいSGLang(プレビュー)OpenAI 互換 API、PD、HiCache、ルーター。イメージは固定する
Ascend 950 があるDeepInfer公式の Ascend 経路。SGLang の V4.1 プレビューは NVIDIA/AMD 中心
決定論的な推論が必要DeepInferSGLang の V4.1 バックエンドは現状、決定論的推論を拒否する
成熟した汎用フレームワークが欲しいSGLangコミュニティが広く、本番運用の実績も長い
研究用に DeepSeek 自身のエンジンを使いたいDeepInferカーネル、EPLB、DSpark、SWA リプレイ、本番の Q&A

FAQ

DeepInfer は SGLang より速いのか

公開された直接比較はない。SGLang の 873.63 tokens/s は 4x GB300 上でバッチサイズ 1、DSpark とシミュレーション上の受入長を使った結果であり、DeepInfer のグラフは SM100 上での自社測定だ。同じモデル、ハードウェア、ワークロードを揃えない限り、両者は比較できない。

SGLang は DeepSeek-V4.1-Flash に対応しているのか

対応している。SGLang は V4.1-Flash の cookbook と day-0 対応を公開している。ただし 2026-10-20 時点ではプレビューの Docker イメージを使うもので、正規の SGLang リリースには入っていない。

SGLang にあって DeepInfer にないものは何か

より完全なサービング層だ。OpenAI 互換 API、PD 分離、HiCache、ルーター、V4.1 のプレビュー手順がある。DeepInfer の公開版には KV cache システム、PD 分離、負荷分散が含まれない。

どちらを選ぶべきか

提供できる API が必要で、今日より完全な V4.1 の経路を求めるなら SGLang から始める。プレビューイメージという但し書きは受け入れる必要がある。研究目的や、SM100・Ascend 950 上での独自デプロイのために DeepSeek 自身のエンジンが欲しいなら DeepInfer を検討する。

出典

次に読む:DeepInfer と vLLM、DeepInfer と TensorRT-LLM、あるいは比較一覧。

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