DeepInfer Field Notes 独立 / ファン制作
ベンチマーク / 2026.10

DeepInferのベンチマーク: V4.1-Flashのprefillとdecode

DeepInferのV4.1-Flash向けローンチ数値は、2つのParetoチャートと評価スクリプトの一式だ。見出しより先に軸、前提、欠けている比較を確認してはじめて、役に立つ。

チャート分析/読了目安 11分/公式README + 評価ドキュメント

DeepInferは、DeepSeek-V4.1-Flashを大規模にサービングするためのDeepSeekのオープンソース推論フレームワークだ。公開されている性能の裏づけは、ローンチ時の話題より狭い。1つのハードウェアファミリ上でのV4.1-Flashのチャート2枚と、オフライン評価の参照スコアだけである。第三者の再現はまだ存在しない。

DeepInferはNVIDIA SM100 GPUとHuawei Ascend 950 NPUをサポートするが、DeepSeekが公開した性能チャートはNVIDIAハードウェアのみを対象としている。数値を読むとき、まずこの非対称性を頭に置いておきたい。

2つのチャート

どちらのチャートも131,072トークンのコンテキストを使う。prefillはSM100 4基、decodeは64基だ。各実行は単一のスケールアップドメイン内で行われている。

DeepInfer READMEのprefill Paretoチャート
Prefill: 非キャッシュ入力スループット対レイテンシ。 EP4DP4、384+32エキスパート、コンテキスト131,072、decoder bounded replay 140トークン。点のラベルはprefillのバッチサイズ。出典: DeepInfer README(Apache-2.0)。
DeepInfer READMEのdecode Paretoチャート
Decode: 出力スループット対インタラクティブ性。 EP64DP64、384+64エキスパート、コンテキスト131,072、nextn=3固定、トークンあたり受容率75%。点のラベルはDPランクあたりのリクエスト数。出典: DeepInfer README(Apache-2.0)。

軸の意味

チャートX軸Y軸点が表すもの
Prefillprefill 1ステップあたりのレイテンシ(ms)非キャッシュ入力スループット(tokens/s/GPU)バッチサイズ。バッチを大きくするとスループットとレイテンシが同時に上がる。
Decodeユーザーあたり速度(tokens/s/user)出力スループット(tokens/s/GPU)DPランクあたりのリクエスト数。並列リクエストを増やすとスループットは上がるが、各ユーザーは遅くなる。

どちらのチャートも、エンドツーエンドのリクエストレイテンシを描いていない。prefillのレイテンシはステップあたりの値であり、実際のリクエストのTTFTではない。decodeのユーザーあたり速度は定常状態の集計値であり、1回のAPI呼び出しのレイテンシではない。ネットワーク、キューイング、トークナイズ、サービング層は測定の外にある。

おおよその読み取り

チャートにはスループットの値が印字されていない。ラベルはバッチサイズかリクエスト数だ。以下の数値は軸から読み取って丸めたものである。形を理解するには役立つが、調達の判断には使えない。

チャート点スループットレイテンシ / ユーザーあたり速度
Prefillバッチ4,096~60k tokens/s/GPU~68 ms/step
Prefillバッチ16,384~81k tokens/s/GPU~200 ms/step
Prefillバッチ65,536~89k tokens/s/GPU~730 ms/step
Decode8リクエスト/ランク~2.6k tokens/s/GPU~325 tokens/s/user
Decode64リクエスト/ランク~15.5k tokens/s/GPU~248 tokens/s/user
Decode256リクエスト/ランク~26k tokens/s/GPU~103 tokens/s/user
なぜ丸めるのか。 チャートの軸は線形だが、点には値のラベルがない。「89,412 tokens/s」と引用すれば、画像が持っていない精度を主張することになる。形を見ればいい。prefillのスループットはバッチサイズとともに上がって頭打ちになり、decodeのスループットは並列度とともに上がる一方でユーザーあたり速度は下がる。

評価スコア

リポジトリには3つのベンチマーク向けのオフライン評価スクリプトも含まれている。これはデフォルト構成でのモデルの参照スコアであり、エンジン間の比較ではない。

ベンチマークタスク数サンプル数Pass@1
AIME 202630タスクあたり3299.9%
GPQA Diamond198タスクあたり893.4%
HLE-Full2,500(テキスト2,158 + 画像342)142.6%

これらは参照値であり、保証ではない。評価用READMEは、サンプリングのため反復実行で小さな差が出うるとしている。また、Pass@1の値はsummary.jsonのcoverage_completeがtrueのときのみ有効だと注記している。再現する人には有用な詳細だ。

評価パイプラインは生成と採点を分離しているので、既存の出力を別のジャッジで採点し直せる。デフォルトのジャッジはLLMサービスだ。AIMEとGPQAには決定論的なルールベースのジャッジも用意されているが、HLEにはない。回答の半数以上が自由記述だからだ。

これらの数値が示さないもの

  • vLLMやSGLangとの比較ではない。 どちらのプロジェクトも独自のV4.1-Flash最適化記事を持ち、ハードウェアもワークロードも異なる。公開された直接対決は存在しない。
  • Ascend 950のデータではない。 READMEはAscend 950をサポートするとしているが、チャートはSM100のみだ。
  • コストモデルではない。 tokens/s/GPUは100万トークンあたりの金額ではない。コストには利用率、電力、減価償却、ネットワーク、ストレージ、障害時の余裕が必要だ。
  • 実ワークロードの保証ではない。 チャートは131,072トークンの固定コンテキストと固定のリクエストパターンを使う。プロンプト分布、出力長、キャッシュヒット率はあなたの環境で異なる。
  • 独立に再現されていない。 2026-10-20 11:30 UTC時点で、第三者による再現は見つかっていない。

再現方法

リポジトリにはスイープ用のハーネスがある。

# Decode: DPランクあたりのリクエスト数をスイープ、nextn=3、受容率75%で描画
bash examples/sweep/run_sweep.sh decode ce-128k 131072 3 0.75

# Prefill: バッチサイズをスイープ
bash examples/sweep/run_sweep.sh prefill pe-128k 131072

# Encoder: 画像サイズを固定し、バッチあたりの画像数をスイープ
bash examples/sweep/run_sweep.sh encoder ve-800

スイープはresults.jsonlとParetoのPNGをsweeps/<tag>/以下に書き出す。マルチノード実行では、dp_rank 0を持つノードだけがJSONLを書き、他のノードは終了後に抜ける。examplesのREADMEは、プロファイラが定常状態の測定値を乱すと警告しており、スイープはPROFILE=0で実行される。

評価スクリプトについては、データセットを指定のパスに置き、bash eval/aime/run.sh、bash eval/gpqa/run.sh、bash eval/hle/run.shを実行する。スクリプトがデータセットをダウンロードしてくれるわけではない。

本番環境の主張

公式だが、ベンチマークではない

DeepSeekは、1つのクラスタで1日155兆トークンをサービングし、オフピーク価格でGPU時間あたり38米ドルの収益を上げていると述べている。記事はクラスタ規模、GPU構成、測定期間を開示していない。収益は利益ではなく、この数字からトークンあたりコストを導くことはできない。

これが最も誤って引用されやすい数字だ。本番規模についての主張であり、ベンチマークの結果ではなく、チャートのtokens/s/GPUと比較できるものでもない。ユニットエコノミクスが必要なら、クラスタ規模、利用率、電力コスト、償却を尋ねるべきだ。どれもローンチ記事には載っていない。

省いたもの。 CryptoBriefingはさらに、キャッシュヒット率96%、TTFT約400 ms、230 tokens/s(コーディングでは300)と報じている。これらの数値は公式READMEやQ&Aの本文には現れない。DeepSeekのZhihu記事にある本番ダッシュボードの画像が出所と考えられる。本サイトの環境ではその画像を読めなかったため、公式の事実としては扱っていない。

次に欲しいもの

  • SM100上での第三者による再現。コミットと構成を明示したもの。
  • Ascend 950のスループットと安定性のデータ。単一ノードの実行でもよい。
  • 同じハードウェア、コンテキスト、ワークロードでのvLLM、SGLangとの直接対決。
  • KV cacheとロードバランシング層を含むエンドツーエンドのサービングベンチマーク。リリースが省いた部分だ。
  • 利用率と電力価格を明示した、100万トークンあたりのコスト。

それまでは、こう読むのが正しい。これらのチャートは、DeepSeekのエンジンがレイテンシとスループットを妥当な形で交換できることを示している。あなたのクラスタがどうなるかは語っていない。

次は推論ベンチマークの読み方の詳解、欠けている部分の意味、あるいは比較へ: DeepInfer vs vLLM、vs SGLang、vs TensorRT-LLM。

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